古典

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第七十七段 ~人生の黄昏~

昔、田邑(たむら)の帝と申すみかどおはしましけり。その時の女御、多賀幾子と申す、みまそがりけり。それうせたまひて、安祥寺にてみわざしけり。人々ささげ物奉りけり。奉り集めたる物、千ささげばかりあり。そこばくのささげ物を木の枝につけて、堂の前に...
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第七十六段 ~昔の恋を偲ぶ~

昔、二条の后の、まだ春宮の御息所と申しける時、氏神にまうでたまひけるに、近衛府(このゑづかさ)にさぶらひけるおきな、人人の禄たまはるついでに、御車よりたまはりて、よみて奉りける、 大原や小塩の山も今日こそは神代のこともおもひいづらめとて、心...
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第七十五段 ~口説きあぐねる~

昔、男、「伊勢の国に率(ゐ)ていきてあらむ」といひければ、女、 大淀の浜に生ふてふみるからに心はなぎぬかたらはねどもといひて、ましてつれなかりければ、男、 袖ぬれてあまの刈りほすわたつうみのみるをあふにてやまむとやする女、 岩間より生ふるみ...