古典

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第八十九段 ~天罰~

昔、いやしからぬ男、われよりはまさりたる人を思ひかけて、年経ける、 人しれずわれ恋ひ死なばあぢきなくいづれの神になき名おほせむ  昔、それほど身分が低くない男が、自分より高貴な女を思い慕って、年を経た後に、〈人知れず私が恋に苦しみ死んでしま...
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第八十八段  ~老い~ 

昔、いと若きにはあらぬ、これかれ友だちども集まりて、月を見て、それがなかにひとり、   おほかたは月をもめでじこれぞこのつもれば人の老いとなるもの  昔、とても若とは言えない者が、あれこれ友だちと集まって、月を見て、その中で一人が、 〈よほ...
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第八十七段 ~海辺の生活~

かへり来る道とほくて、うせにし宮内卿もちよしが家の前来るに、日暮れぬ。やどりの方を見やれば、あまのいさり火多く見ゆるに、かのあるじの男よむ。 晴るる夜の星か河べの蛍かもわがすむかたのあまのたく火かとよみて、家にかへり来ぬ。その夜、南の風吹き...