古典

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第八十四段 ~母への思い~

昔、男ありけり。身はいやしながら、母なむ宮なりける。その母、長岡といふ所にすみたまひけり。子は京に宮仕へしければ、まうづとしけれど、しばしばえまうでず。ひとつ子にさへありければ、いとかなしうしたまひけり。さるに、十二月ばかりに、とみのことと...
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第八十三段 ~御出家~

昔、水無瀬に通ひたまひし惟喬の親王、例の狩しにおはします。供に、馬の頭なるおきな仕うまつれり。日ごろ経て、宮にかへりたまうけり。御おくりしてとくいなむと思ふに、大御酒たまひ、禄たまはむとて、つかはさざりけり。この馬の頭、心もとながりて、  ...
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第八十二段 ~その三 主従関係~

親王、歌をかへすがへす誦じたまうて、返しえしたまはず。紀の有常、御供に仕うまつれり。それが返し、 ひととせにひとたび来ます君待てば宿かす人もあらじとぞ思ふかへりて宮に入らせたまひぬ。夜ふくるまで酒飲み、物語して、あるじの親王、酔ひて入りたま...