古典

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第百四段 ~斎宮という人~

昔、ことなることなくて尼になれる人ありけり。かたちをやつしたれど、ものやゆかしかりけむ、賀茂の祭見にいでたりけるを、男、歌よみてやる、 世をうみのあまとし人を見るからにめくはせよとも頼まるるかなこれは、斎宮のもの見たまひける車に、かく聞えた...
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第百三段 ~歌のたしなみ~ 

昔、男ありけり。いとまめにじちようにて、あだなる心なかりけり。深草の帝になむ仕うまつりける。心あやまりやしたりけむ、親王たちのつかひたまひける人をあひいへりけり。さて、 寝ぬる夜の夢をはかなみまどろめばいやはかなにもなりまさるかなとなむよみ...
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第百二段 ~恋が終わっても~

昔、男ありけり。歌はよまざりけれど、世の中を思ひしりたりけり。あてなる女の、尼になりて、世の中を思ひうんじて、京にもあらず、はるかなる山里にすみけり。もとしぞくなりければ、よみてやりける、 そむくとて雲には乗らぬものなれど世の憂きことぞよそ...