古典

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第百七段 ~代役~

昔、あてなる男ありけり。その男のもとなりける人を、内記にありける藤原の敏行といふ人よばひけり。されど若ければ、文もをさをさしからず、ことばもいひしらず、いはむや歌はよまざりければ、かのあるじなる人、案をかきて、かかせてやりけり。めでまどひに...
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第百六段 ~名歌~

昔、男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、龍田河のほとりにて、 ちはやぶる神代も聞かず龍田河からくれなゐに水くくるとは 昔、男が、親王たちが行楽を楽しんでいらっしゃる所に参上して、竜田川のほとりで、〈不思議なことが数々あったと言う神代の頃...
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第百五段 ~恋は駆け引き~

昔、男、「かくては死ぬべし」といひやりたりければ、女、 白露は消なば消ななむ消えずとて玉にぬくべき人もあらじをといへりければ、いとなめしと思ひけれど、心ざしはいやまさりけり。 昔、男が、「このままでは(あなたが恋しいあまりに)死んでしまいま...