古典

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第百二十段 ~嫌みな男~

昔、男、女のまだ世経ずとおぼえたるが、人の御もとにしのびてもの聞えてのち、ほど経て、 近江なる筑摩(つくま)の祭とくせなむつれなき人のなべのかず見む 昔、男が、女でまだ男女の関わりをしていない(「世を経ず」)と思われる女が、身分のある人のも...
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第百十九段 ~苦痛のたね~

昔、女のあだなる男の形見とておきたる物どもを見て、 かたみこそいまはあたなれこれなくは忘るる時もあらましものを 昔、女が誠意のない浮気男が別れた後も思い出せるように形見だと言って置いていった品々を見て、〈別れた後の慰めとなる形見の品々が今と...
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第百十八段 ~葛のような男~

昔、男、久しく音もせで、「忘るる心もなし、まゐり来む」といへりければ、 玉かづらはふ木あまたになりぬればたえぬ心のうれしげもなし 昔、男が、長いこと女を訪ねることもなく、(たよりさえしなかったのに、)「(ご無沙汰していますが、)あなたを忘れ...