古典

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第百二十三段 ~歌の力~

昔、男ありけり。深草にすみける女をやうやう飽きがたや思ひけむ、かかる歌をよみけり。 年を経てすみこし里をいでていなばいとど深草野とやなりなむ女、返し、 野とならばうづらとなりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむとよめりけるにめでて、ゆかむ...
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第百二十二段 ~愛の誓い~

昔、男、ちぎれることあやまれる人に、 山城の井出の玉水手にむすびたのみしかひもなき世なりけりといひやれど、いらへもせず。 昔、男が愛を誓った言葉を破った女に、〈一緒に山城の井出の清らかな水(「玉水」)を手に掬って(「むすび」)手で飲みました...
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第百二十一段 ~粋なやり取り~

昔、男、梅壷より雨にぬれて、人のまかりいづるを見て、 うぐひすの花を縫ふてふ笠もがなぬるめる人に着せてかへさむ 返し、 うぐひすの花を縫ふてふ笠はいなおもひをつけよほしてかへさむ 昔、男が梅壺の殿舎から雨に濡れて、人が退室するのを見て、〈鶯...