古典

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第百四十三段  臨終の見聞

人の終焉の有様のいみじかりし事など、人の語るを聞くに、ただ、閑にして乱れずと言はば心にくかるべきを、愚かなる人は、あやしく異なる相を語りつけ、言ひし言葉も、ふるまひも、おのれが好むかたにほめなすこそ、その人の日来の本意にもあらずやと覚ゆれ。...
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《短夜を嘆く郭公》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた みふのたたみね くるるかとみれはあけぬるなつのよをあかすとやなくやまほとときす (157) 暮るるかと見れば明けぬる夏の夜を飽かずとや鳴く山郭公 「宇多天皇の御代、皇后温子様が主催された歌合わせの歌  壬生忠...
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第百四十二段  何が根本か

心なしと見ゆる者も、よき一言いふものなり。ある荒夷のおそろしげなるが、かたへにあひて、「御子はおはすや」と問ひしに、「一人も持ち侍らず」と答へしかば、「さては、もののあはれは知り給はじ。情なき御心にぞものし給ふらんと、いとおそろし。子故にこ...