2021-08

古典

第四十三段  書を見る貴公子

春の暮つ方、のどやかに艶なる空に、いやしからぬ家の、奥深く、木立ものふりて、庭にちりしをれたる花、見過しがたきを、さし入りて見れば、南面の格子、皆おろしてさびしげなるに、東にむきて妻戸のよきほどにあきたる、御簾のやぶれより見れば、かたちきよ...
古典

《娘を花にたとえる》

そめとののきさきのおまへに花かめにさくらの花をささせ給へるを見てよめる  さきのおほきおほいまうちきみ としふれはよはひはおいぬしかはあれとはなをしみれはものおもひもなし (52) 染殿の后の御前に花甕に桜の花を挿させ給へるを見て詠める  ...
古典

第四十二段  奇病の僧

唐橋中将といふ人の子に、行雅僧都とて教相の人の師する僧ありけり。気の上る病ありて、年のやうやうたくるほどに、鼻の中ふたがりて、息も出でがたかりければ、さまざまにつくろひけれど、わづらはしくなりて、目・眉・額などもはれまどひて、うちおほひけれ...