2021-05

古典

第十二段  理想的な友

おなじ心ならん人としめやかに物語して、をかしき事も、世のはかなき事も、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向ひゐたらんは、ひとりある心地やせん。 たがひに言はんほどの事をば、「げに」と聞くかひあるも...
古典

《鶯鳴いてこその春だ》

寛平御時きさいの宮のうたあはせのうた  大江千里 うくひすのたによりいつるこゑなくははるくることをたれかしらまし (14) 鶯の谷より出づる声無くは春来ることを誰か知らまし 「鶯が谷より出できて鳴く声が無かったら、春が来たことを誰が知るだろ...
古典

第十一段  理想的には行かない

神無月の比、来栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入る事侍りしに、遥かなる苔の細道をふみわけて、心ぼそく住みなしたる庵あり。木の葉に埋もるる懸樋のしづくならでは、つゆおとなふものなし。  閼伽棚に菊・紅葉など折り散らしたる、さすがに住む人の...