2020-07

古典

彼等親子の家に寄寓

社の報酬はいふに足らぬほどなれど、棲家《すみか》をもうつし、午餐《ひるげ》に往く食店《たべものみせ》をもかへたらんには、微《かすか》なる暮しは立つべし。兎角《とかう》思案する程に、心の誠を顕《あら》はして、助の綱をわれに投げ掛けしはエリスな...
古典

新聞社の通信員

公使に約せし日も近づき、我命《めい》はせまりぬ。このまゝにて郷にかへらば、学成らずして汚名を負ひたる身の浮ぶ瀬あらじ。さればとて留まらんには、学資を得べき手だてなし。 此時余を助けしは今我同行の一人なる相沢謙吉なり。彼は東京に在りて、既に天...
古典

遂に離れ難き中となりし

嗚呼、委《くはし》くこゝに写さんも要なけれど、余が彼を愛《め》づる心の俄《にはか》に強くなりて、遂に離れ難き中となりしは此折なりき。我身の大事は前に横《よこたは》りて、洵《まこと》に危急存亡の秋《とき》なるに、この行《おこなひ》ありしをあや...