古典 非常に微妙な点において欠ける 袁傪は部下に命じ、筆を執って叢中の声に随《したが》って書きとらせた。李徴の声は叢の中から朗々と響いた。長短凡《およ》そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一読して作者の才の非凡を思わせるものばかりである。しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然《ばくぜん》... 2020.05.23 古典
古典 詩の伝錄 袁傪はじめ一行は、息をのんで、叢中《そうちゅう》の声の語る不思議に聞入っていた。声は続けて言う。 他でもない。自分は元来詩人として名を成す積りでいた。しかも、業未《いま》だ成らざるに、この運命に立至った。曾て作るところの詩数百篇《ぺん》、固... 2020.05.22 古典
古典 誰にもわからない いや、そんな事はどうでもいい。己の中の人間の心がすっかり消えて了えば、恐らく、その方が、己はしあわせになれるだろう。だのに、己の中の人間は、その事を、この上なく恐しく感じているのだ。ああ、全く、どんなに、恐しく、哀《かな》しく、切なく思って... 2020.05.21 古典