古典 「うめもんぜ」 祖母と、姉と、三人で、しばらく顔を見合わせていた。父親は、正月休みで帰ってきたとき、今年の盆には帰れぬだろうと話していたから、みんなはすっかりその気でいたのだ。 もちろん、父親が帰ってくれるのはうれしかったが、正直いって土産が少し心もとなか... 2020.03.14 古典
古典 「土産は、えびフライ。」 えびフライ。どうもそいつが気にかかる。 ゆうべ、といっても、まだ日が暮れたばかりのころだったが、町の郵便局から赤いスクーターがやってきたときは、家じゅうでひやりとさせられた。東京から速達だというから、てっきり父親の工事現場で事故でもあったの... 2020.03.13 古典
古典 父っちゃのだし 父っちゃのだしというのは、父親の好きな生そばのだしのことで、父親はいつも、干した雑魚をだしにした生そばを食わないことには自分の村へ帰ってきたような気がしない、と言っている。 帰るなら、もっと早くに知らせてくれればこんなに慌てずに済むものを... 2020.03.12 古典