2019-07

古典

第五十一段 ~贈り物~

昔、男、人の前栽に菊植ゑけるに、 植ゑし植ゑば秋なき時や咲かざらむ花こそ散らめ根さへ枯れめや  男が女の家の植え込み(「前栽(せんざい)」)に菊を植えた折に詠んだ、〈こうしてしっかり植えるなら、秋が無い時は咲かないでしょうか、まあ、咲かない...
古典

第五十段 ~痴話喧嘩~

昔、男ありけり。うらむる人をうらみて、 鳥の子を十づつ十はかさぬとも思はぬ人を思ふものかは といへりければ、  朝露は消えのこりてもありぬべしたれかこの世をたのみはつべき また、男、  吹く風に去年の桜は散らずともあなたのみがた人の心は ま...
古典

第四十九段 ~妹~

昔、男、妹のいとをかしげなりけるを見をりて、 うら若みねよげに見ゆる若草を人のむすばむことをしぞ思ふと聞えけり。返し、 初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな  男は、妹が年ごろになって、たいそうかわいらしくなったことに気づ...