古典

第十三段 ~浮気の告白~

昔、武蔵なる男、京なる女のもとに、「聞ゆれば恥づかし、聞えねば苦し」と書きて、うはがきに、「むさしあぶみ」と書きて、おこせてのち、音もせずなりにければ、京より、女、 武蔵鐙さすがにかけて頼むには問はぬもつらし問ふもうるさしとあるを見てなむ、...
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第十二段 ~思いの多少~

昔、男ありけり。人のむすめを盗みて、武蔵野へ率てゆくほどに、ぬすびとなりければ、国の守にからめられにけり。 女をば草むらのなかに置きて、逃げにけり。道来る人、「この野はぬすびとあなり」とて、火つけむとす。女わびて、 武蔵野は今日はな焼きそ若...
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第十一段 ~友への思い~

昔、男、あづまへゆきけるに、友だちどもに、道よりいひおこせける。 忘るなよほどは雲居になりぬとも空ゆく月のめぐりあふまで  男は東国への旅の途上にある。「道」は、目的地があることを示す。「道よりいひおこせける」の「おこす」は〈よこす〉で〈や...