山川 信一

古典

《恋のジレンマ》

題しらす をののはるかせ はなすすきほにいててこひはなををしみしたゆふひものむすほほれつつ (653) 花芒穂に出でて恋ひば名を惜しみ下結ふ紐の結ぼほれつつ 「題知らず 小野春風 表に表して恋するなら立つ評判が落ちるのが惜しくて、気がふさい...
古典

《歌の物語性》

題しらす よみ人しらす こひしくはしたにをおもへむらさきのねすりのころもいろにいつなゆめ (652) 恋しくば下にを思へ紫の根摺りの衣色に出なゆめ 「題知らず 詠み人しらず 恋しいならば心の内で思え。顔色に出すな、ゆめゆめ。」 「(恋しく)...
古典

《恋の後ろめたさ》

題しらす よみ人しらす よしのかはみつのこころははやくともたきのおとにはたてしとそおもふ (651) 吉野川みつの心は速くとも滝の音には立てじとぞ思ふ 「題知らず 詠み人知らず 吉野川の水のように私の心は激しくても、滝のように音は立てまいと...