《靡く女郎花》

朱雀院のをみなへしあはせによみてたてまつりける 時平 左のおほいまうちきみ

をみなへしあきののかせにうちなひきこころひとつをたれによすらむ (230)

女郎花秋の野風にうち靡き心一つを誰に寄すらむ

「朱雀院の女郎花合わせに詠んで、献上した  藤原時平左大臣
女郎花が秋の野風にうち靡き、心を一つにして誰に寄せているのだろう。」

「女郎花秋の野風にうち靡き」までが描写、「心一つを誰に寄すらむ」がそれを見ての感想。「らむ」は、現在推量の助動詞の連体形。
女郎花が秋の野を吹く風に一斉に一方向に靡いている。女郎花は、心を一つにして誰に靡いているのだろうか。自分には見向いてもくれない。その男が羨ましくも妬ましくもある。
女郎花が秋の野風に一斉に靡いている様子をこう捉えた。女郎花という名なのだから、男に靡いているはずだと。女とは、少しでもいい男に靡くものだから。人事をたとえに使って、女郎花の様子を想像させている。そう思うと、野に咲く女郎花の様子が見えてくるではないか。ここからは「をみなへしあはせ」で詠まれた歌が続く。「をみなへしあはせ」とは、女郎花の歌で勝負を争う遊びである。

コメント

  1. すいわ より:

    「をみなへしあはせ」での歌、この歌合せの勝者はいずれか!という風にも受け取れます。秋草一つで皆が共感し、特別なものを持たずとも言葉一つで秋を味わい尽くす。贅沢な遊びですね。

    • 山川 信一 より:

      なるほど、そんな興味も覚えますね。これから続く歌合わせの歌が楽しみです。ちなみに、貫之も詠んでいます。この贅沢な遊びに参加しましょう。

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