《雨にも負けず》

郭公のなくをききてよめる つらゆき

さみたれのそらもととろにほとときすなにをうしとかよたたなくらむ (160)

五月雨の空も轟に郭公なにを憂しとか夜直鳴くらむ

「郭公が鳴くのを聞いて詠んだ  貫之
五月雨が空も響くほど降っている。郭公は何を嫌だと夜通し鳴いているのだろうか。」

文としては、「轟に」で切れる。しかし、意味としては、「鳴く」にも掛かる。「夜直」は「一晩中」の意の副詞。「憂しとか」の「か」は係助詞で疑問を表し、係り結びとして働き、「らむ」に掛かる。「らむ」は、現在推量の助動詞の連体形。郭公が鳴いている姿は見ていない。
五月雨が空も響くほど激しく降っている。その中に郭公の声が聞こえてくる。その声は五月雨の音にもかき消されることがない。それほど強い。しかも、夜通し鳴き続けている。きっと、辛い訳があるのだろう。そうでなくては、こんなに鳴かないはずだ。お前は何がそんなに辛いのだろうか。もしかすると、眠れずにいる私同様、降り続く長雨にうんざりしているのかも知れない。
郭公は、雨だからと言って大人しくしている鳥ではない。五月雨の轟音に負けないくらい夜通し、強く鳴き続ける。そんな郭公の習性・特色をこう表現した。そして、人がそれをどう聞くのか、その心も共に表している。

コメント

  1. すいわ より:

    そうなんですよね、郭公、夜も鳴くのですよね。
    激しく降り続ける五月雨。郭公は何を憂うのか暗闇の中、声だけが夜通し聞こえている。鳴き声、泣き声?この雨は本当に五月雨?お前の深い嘆きの涙なのか?あぁ、今宵も眠れない、、

    • 山川 信一 より:

      五月雨は今の梅雨。夜になっても雨脚は激しくなるばかり。その鬱陶しい気分を共有するかのように鳴く郭公。それを捉えた歌ですね。

  2. らん より:

    郭公の強い意志を感じました。
    雨に負けずに鳴いてるのですね。

    雨やだよー、鬱陶しいよでしょうか。
    それとも何か悲しみを抱えているのでしょうか。
    黙ってないで主張するのですね。
    自分の想いをちゃんとぶつけてくるんだなあ。すごいですね。

    • 山川 信一 より:

      自分の思いを主張するかのようになく郭公。そこに共感を覚えたのでしょう。まるで自分の思いを代弁しているようだと。

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