2022-03

古典

第百三十七段  心で味わう

花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは。雨に向ひて月を恋ひ、たれこめて春の行方知らぬも、なほあはれに情けふかし。咲きぬべきほどの梢、散りしをれたる庭などこそ見所多けれ。歌の詞書にも、「花見にまかれけるに、はやく散り過ぎにければ」とも、...
古典

《情感の乏しさ》

題しらす よみ人しらす こゑはしてなみたはみえぬほとときすわかころもてのひつをからなむ (149) 声はして涙は見えぬ郭公我が衣手の漬つを借らなむ 「声はして涙は見えない郭公よ。私の袖が涙で濡れているのを借りてお前の涙として欲しいなあ。」 ...
古典

第百三十六段  策略家六条故内府

くすし篤成、故法皇の御前にさぶらひて、供御の参りけるに、「今参り侍る供御の色々を、文字も功能も尋ね下されて、そらに申し侍らば、本草に御覧じあはせられ侍れかし。ひとつも申しあやまり侍らじ」と申しける時しも、六条故内府参り給ひて、「有房ついでに...