2022-01

古典

第百十段  勝つと思えば負ける

双六の上手といひし人に、そのてだてを問ひ侍りしかば、「勝たんと打つべからず。負けじと打つべきなり。いづれの手かとく負けぬべきと案じて、その手を使はずして、一目なりともおそく負くべき手につくべし」といふ。道を知れる教、身を修め、国を保たん道も...
古典

《思い出に誘う花》

題しらす よみ人しらす はるさめににほへるいろもあかなくにかさへなつかしやまふきのはな (122) 春雨に匂へる色も飽かなくに香さへ懐かし山吹の花 「春雨が降る中に美しく咲く色も飽きないのに、香りまでもが懐かしい。山吹の花は。」 「飽かなく...
古典

第百九段    油断大敵

高名の木登りといひしをのこ、人をおきてて、高き木に登せて梢を切らせしに、いと危ふく見えしほどは言ふ事もなくて、おるるときに軒長ばかりになりて、「あやまちすな。心しておりよ」と言葉をかけ侍りしを、「かばかりになりては、飛びおるるともおりなん。...