第四段 来世への備え

後の世の事、心にわすれず、仏の道うとからぬ、こころにくし。

「来世のことを、常に心に置き、仏道修行を怠らないのが、おくゆかしい。」

「願はしかるべき事」が続いている。現世だけではなく、死んだ後のことにも気配りして生活すべきだと言う。とかく人間は現世のことだけにかまけて、来世への備えを忘れがちである。だから、そこにもきちんと気を配って生きる人は、その心遣いに深い思慮が見えて、心惹かれるのである。
現代人に参考になるとすれば、次のようなことだろう。
現世での価値、たとえば、財産・地位・名誉など他者を基準にしたものは、死と共に意味が無くなる。したがって、それのみに固執して、生きることは空しい。もしその愚かさを知り、今を確かに生きる人がいれば、心にくい。

コメント

  1. すいわ より:

    御仏の御前に出る日のことを心にかけて現世でも弛まず精進をしておく(御仏はお見通しなのだからね)、というニュアンスが強いような気がします。
    先生の仰るように、「確かに生きる」事が大事、確かに生きている人には地位やら何やらは求めずとも後から追いかけて来ると思うのです。

    • 山川 信一 より:

      兼好法師は、バランス感覚を大事にしているようです。何事もほどほどに気配りしてバランス良く生きるのが望ましいと言いたいのでしょう。
      「確かに生きる」とは、志を持って生きることです。人の価値は、その志(のあり方)を持って測るべきでしょう。

  2. らん より:

    バランス、大事ですね。
    私は、志を持って、それに沿って、今を楽しく生きることが全てにつながるのではないかと思います。

    • 山川 信一 より:

      今はなぜか「夢を持て」とは言いますが、「志を抱け」とは言いませんね。
      「志」を持つことこそ大事です。「夢」は、夢幻と言うように儚いものです。

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