廿三日、ひてりてくもりぬ。このわたり、かいぞくのおそりありといへばかみほとけをいのる。
廿四日、きのふのおなじところなり。
廿五日、かじとりらのきたかぜあしといへば、ふねいださず。かいぞくおひくといふことたえずきこゆ。
問「かじとりらのきたかぜあしといへば、ふねいださず。かいぞくおひくといふことたえずきこゆ」とあるが、書き手はどのような状況・心境にあったのか、説明しなさい。
三日も足止めを食らう。天気が安定しないからだ。この区域は海賊が出る恐れがあるという。一刻もここから早く抜け出したいのに・・・。イライラと不安は募るばかりだ。神仏に祈るほかない。
舵取りたちが北風が運行に悪いと言うので、船君は船を出さない。海賊が追ってくるということが絶えず耳に入ってくる。この情報は舵取りらが発している。こうしてみると、船の主導権は船君ではなく、事実上、舵取りが握っている。何だか嫌な予感がする。(問)
コメント
海賊はずっと後を追ってくるのでなく、こちらの動きを把握していて、追い付かれるというより、襲いやすい難所に差し掛かるのを待っているのだと思いました。
物語を地図で辿ってみると、この辺りは今でも海の難所ですね。瀬戸内の穏やかな海と違って紀伊水道からの流れで沖へ流されかねない。船君は海の専門家である舵取りに任せるより他ない。海賊の襲来にも怯え、地方での務めより行き来の移動の方がよほど神経を擦り減らせたのではないでしょうか。
海賊については、事実としてはその通りでしょおう。ただ、書き手の意識としては追われているので、早く逃げたいだったのでしょう。
舵取りは、欲張りな人です。その人がイニシアティブを握ることに書き手は一抹の不安を感じています。何か言ってこなければいいのですが・・・。