三日間停泊

廿三日、ひてりてくもりぬ。このわたり、かいぞくのおそりありといへばかみほとけをいのる
廿四日、きのふのおなじところなり
廿五日、かじとりらのきたかぜあしといへば、ふねいださず。かいぞくおひくといふことたえずきこゆ

廿三日、日照りて曇りぬ。此の渡り、海賊の恐り有りと言へば神仏を祈る。
廿四日、昨日の同じ所なり。
廿五日、舵取らの北風悪しと言へば、船出さず。海賊追ひ来と言ふこと絶えず聞こゆ。

おそり:四段動詞「恐る」の連用形。
かみほとけをいのる:神仏に対して祈る。「を」は対象を表している。
きのふのおなじところ:昨日と同じ所。「の」は当時の慣用的な言い方。

問「かじとりらのきたかぜあしといへば、ふねいださず。かいぞくおひくといふことたえずきこゆ」とあるが、書き手はどのような状況・心境にあったのか、説明しなさい。

コメント

  1. すいわ より:

    せっかく天気が落ち着いても、航路で海賊の襲来が予想される為に欠航がまた続き、更に舵取りは酷い北風が入って海が荒れると言うのでいずれにしても船の出せる状態にない。一体、いつになったら船は出るのか、京へ辿り着けるのか。船が出ない事に苛立ちもあるが、船が出たところで、海賊の噂は始終耳に入ってくるし、不安でならない。神仏に祈るより他ない。

    • 山川 信一 より:

      その通りです。出航できない状況に不安を抱えています。
      ただ、天気と海賊の関係は、並列ではなく、天気が悪いので出航できず、このままでは海賊に追いつかれるという関係でしょう。

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