きらびやかに光り輝く

 わたしのちょうは、明るいランプの光を受けて、箱の中から、きらびやかに光り輝いた。わたしたちは、その上に体をかがめて、美しい形や、濃い見事な色を眺め、ちょうの名を言った。
「これは、ワモンキシタバで、ラテン語名はフルネミア。ここらではごく珍しいやつだ。」
と、わたしは言った。

「自然が作り出した形や色は、神秘的ですよね。」とあたし。
「「明るいランプの光を受けて箱の中から、きらびやかに光り輝いた」という表現がいいね。その様子がありありと目に浮かぶわ。」と明美班長。
 なるほど、表現が工夫されている。ちょうが浮き上がってくる感じがする。そう読むのか。「神秘的」だけじゃ漠然としてるんだ。
「よほど手入れがいいんだね。ちょうの収集への愛情が伝わってくるわ。」と明美班長が付け加えた。
「ちょうは好きじゃないけど、見た目はきれいよね。自然の造形美ってヤツね。」と若葉先輩が言う。あたしもそう思う。
「ちょうの名を言い合うんだから、この二人よほどちょうが好きなんだね。でも、私には、この二人みたいに美しいと思えるかしら。」と真登香先輩。
 真登香先輩は、よほどちょうが嫌いなんだね。あたしは、虫が前より嫌いになったけど、そこまでじゃないな。でも、なんで嫌いになってきたんだろう。
「「わたし」はコレクションを自慢しているね。趣味が同じもの同士の高度な会話だよね。ラテン語名まで出てくるんだから。」と若葉先輩。
「ただ、この自慢は見せびらかして優越感に浸ろうって感じではないな。喜びを一緒に共有しようって感じがする。あたしたちだって、「このシュシュかわいくない?」「うん、かわいいね」って言ったりするよね。あの感じに近いと思う。」と明美班長。
 友情って、共通の趣味があると深まるんだろうな。あたしの趣味って何だろう?虫に興味ないし、花もきれいだとは思うけど・・・。あっ、そうか。この部活もそれだよね。

コメント

  1. すいわ より:

    ランプの揺らめく光を受けて、蝶はさながら羽ばたくように見えたのではないでしょうか。モルフォ蝶みたいな金属光沢のある種だったら本当に美しい事でしょう。「わたし」の持って来た箱、大きめの箱に沢山並べた採集標本を思い浮かべていたのですが、一箱に一匹を収めて大切にしている様子、コレクター同士、貴重なものを愛で鑑賞する喜びを分かち合っている感じがします。大人になった今、子供の頃の収集よりも専門的により洗練されたコレクションが出来て、熱の入っている事でしょう。ドイツとかフランスでは蝶と蛾はほとんど区別しないのですよね、ワモンキシバタは、、沢渡さんには内緒にしておきましょう、、

    • 山川 信一 より:

      すいわさんは、蝶に詳しいのですね。モルフォ蝶をよくご存じですね。ワモンキシタバはまさに蛾って感じですね。真登香さんなら身震いするでしょうね。

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