2019-07

古典

第五十四段 ~恋の闘い~

昔、男、つれなかりける女にいひやりける。 ゆきやらぬ夢路を頼むたもとには天つ空なる露や置くらむ 前の段の女と同一人物かはわからないけれど、そう読んだ方が面白い。〈つれなし〉は、冷たい、薄情だということ。依然として逢うのが難しく、手こずってい...
古典

第五十三段 ~満たされない愛~

昔、男、あひがたき女にあひて、物語などするほどに、とりの鳴きければ、 いかでかはとりの鳴くらむ人しれず思ふ心はまだ夜ぶかきに  なかなか逢えない女にようやく逢って、話などするうちに、鶏が鳴いて帰る時間になったので、〈どうして(「いかでかは」...
古典

第五十二段 ~時節の贈り物~

昔、男ありけり。人のもとよりかざりちまきおこせたりける返りごとに、 あやめ刈り君は沼にぞまどひける我は野にいでて狩るぞわびしきとて、雉をなむやりける。  前段に引き続き、贈り物の話。「かざりちまき」は、色々の糸や笹などでもち米を巻いたもので...