2019-07

古典

第六十六段 ~恋の息抜き~

むかし、男、津の国にしる所ありけるに、あにおとと友だちひきゐて、難波の方にいきけり。渚を見れば、船どものあるを見て、 難波津を今朝こそみつの浦ごとにこれやこの世をうみ渡る船これをあはれがりて、人々かへりにけり。  昔、男が摂津国(「津の国」...
古典

第六十五段 ~その四 恋と倫理~

かかれば、この女は蔵にこもりながら、それにぞあなるとは聞けど、あひ見るべきにもあらでなむありける、 さりともと思ふらむこそ悲しけれあるにもあらぬ身をしらずしてと思ひをり。男は、女しあはねば、かくし歩きつつ、人の国に歩きて、かくうたう、 いた...
古典

第六十五段 ~その三 罰~

この帝は、顔かたちよくおはしまして、仏の御名を御心に入れて、御声はいと尊くて申したまふを聞きて、女はいたう泣きけり。「かかる君に仕うまつらで、宿世つたなく、悲しきこと、この男にほだされて」とてなむ泣きける。 かかるほどに、帝聞しめしつけて、...