古典

第二百三十段  狐の文化的価値

五条内裏には、妖物(ばけもの)ありけり。藤大納言殿語られ侍りしは、殿上人ども黒戸にて碁をうちけるに、御簾をかかげて見るものあり。「誰そ」と見向きたければ、狐、人のやうについ居てさし覗きたるを、「あれ狐よ」ととよまれて、惑ひ逃げにけり。未練の...
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《秋の野への招待》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた  ありはらのむねやな あきのののくさのたもとかはなすすきほにいててまねくそてとみゆらむ (243) 秋の野の草の袂か花すすき穂に出でて招く袖と見ゆらむ 「宇多天皇の御代皇后温子様の歌合の歌  在原棟梁 秋の野...
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第二百二十九段  鈍い刀の効用

よき細工は、少しにぶき刀をつかふといふ。妙観が刀はいたくたたず。 妙観:仏教工芸にも関わる僧の名。 「上手な細工師は、少し切れ味の鈍い刀を使うと言う。妙観の刀は大して切れない。」 鈍い刀を使った方がいい理由は書かれていない。兼好は時々こうい...