山川 信一

古典

《引き留めるために》

題しらす  みくにのまち やよやまてやまほとときすことつてむわれよのなかにすみわひぬとよ (152) やよや待て山郭公言伝てむ我世中に住みわびぬとよ 「題知らず  三国町 ねえ、待って。山郭公よ。伝言を頼もう。私は世の中に住み悩んでしまった...
古典

第百三十七段  死への自覚

かの桟敷の前をここら行きかふ人の、見知れるがあまたあるにて知りぬ、世の人数もさのみは多からぬにこそ。この人みな失せなん後、我が身死ぬべきに定まりたりとも、ほどなく待ちつけぬべし。大きなる器に水を入れて、細き穴をあけたらんに、滴る事すくなしと...
古典

《夏に貴重な鳥》

題しらす よみ人しらす いまさらにやまへかへるなほとときすこゑのかきりはわかやとになけ (151) 今さらに山へ帰るな郭公声の限りは我が宿に鳴け 「せっかく出て来たのだから今更山へ帰るな、郭公よ。声が出る限りは我が家で鳴け。」 「帰るな」と...