《香りこそ梅の美点》

くらふ山にてよめる  つらゆき

うめのはなにほふはるへはくらふやまやみにこゆれとしるくそありける (39)

梅の花匂ふ春べはくらぶ山闇に越ゆれど著くぞ有りける

春ベ:春の頃。春先。

「くらぶ山で詠んだ  紀貫之
梅の花のよい香りがする春の頃は、暗いくらぶ山を闇の中で越えたけれど、梅の花があることがはっきりとわかった。」

「くらぶ山」には、暗いという意味が込められている。くらぶ山は、木が生い茂っていて常にこ暗い山を意味している。その山を夜、闇に紛れて越えることがあった。当然、梅の花の姿を見ることはできない。しかし、春の頃で梅の花のよい香りがしていたので、そこに梅の花があることははっきりわかった。これが他の花であればこうはいかない。香りこそが梅の最大の取り柄であるであると梅の花を讃えている。

コメント

  1. すいわ より:

    暗い山道を行くだけでも心細いはずなのに、夜の闇に包まれた山を越える。何も見えず、獣の息遣いまで聞こえそうで恐怖に支配されてしまいそう。そんな時、真っ黒な闇に梅の香が灯る。白と黒のコントラスト、闇が深ければ深いほど、いやましに梅の冴えた香りを全身で感じることが出来そうです。

    • 山川 信一 より:

      なるほど、真っ暗な闇の中で目には見えなくても、梅の香によってその映像が目に浮かび、白と黒とのコントラストが感じられるのですね。
      梅の香のなんと刺激的なことか。梅の香の魅力をこんな風に表しているのですね。

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