2021-06

古典

第二十五段  人の世のはかなさ

飛鳥川の淵瀬常ならぬ世にしあれば、時移り事去り、楽しび・悲しび行きかひて、はなやかなりしあたりも人住まぬ野らとなり、変らぬ住家は人あらたまりぬ。桃李ものと言はねば、誰とともにか昔を語らん。まして、見ぬいにしへのやんごとなかりけん跡のみぞ、い...
古典

《帰雁の情緒》

かりのこゑをききてこしへまかりにける人を思ひてよめる  凡河内みつね はるくれはかりかへるなりしらくものみちゆきふりにことやつてまし (30) 春来れば雁帰るなり白雲の道行き触りに言や伝てまし こし:越。越前・越後を言う。 まかり:地方に行...
古典

第二十四段  神社のよさ

斎宮の野の宮におはしますありさまこそ、やさしく面白き事のかぎりとは覚えしか、「経」「仏」など忌みて、「中子」「染紙」など言ふなるもをかし。すべて神の社こそ、捨てがたく、なまめかしきものなれや。ものふりたる森の気色もただならぬに、玉垣しわたし...