まくるこゝち

四日、かぜふけばえいでたゝず。まさつらさけよきものたてまつれり。このかうやうのものもてくるひとになほしもえあらでいさゝげわざせさす。ものもなし。にぎはゝしきやうなれどまくるこゝちす

四日、風吹けばえ出で立たず。まさつら、酒良き物奉れり。このかう様の物持て来る人に尚しもえあらで、聊げ業せさす。物も無し。賑はしき様なれど負くる心地す。

え出で立たず:出発できない。「え・・・ず」は「・・・できない」の意。
たてまつれり:まさつらが旧国司に献上した。(書き手は、旧国司とは別人という建前で書いている。)
なほしもえあらで:そのまま貰いっぱなしにしてもおくこともできず。「しも」は強意の副助詞。
いさゝげわざせさす:わずかな贈り物への返礼をさせる。
ものもなし:碌なものもない。

問 「にぎはゝしきやうなれどまくるこゝちす」とは、どんな思いか答えなさい。

コメント

  1. すいわ より:

    「風が吹いたのでこの日も出航できなかった」のですね。訪問客が高価な物を旧国司殿にお届けになったけれど、ただもらう訳にもいかずちょっとした返礼の品を用意させたけれど、なにぶん船の上、碌なものもなくて、、

    問 これまでにもあちこちから沢山の頂き物をして裕福かと思いきや、本来ならそれに見合ったお返しが必要な訳
    で、船の上では如何ともし難く、貰いっ放しの感が否めない。その事がどうにも引け目に感じる。

    • 山川 信一 より:

      その通りです。出発できないために、舟が順調に進んでいればしなくてもいいはずの余分な対応をしなければなりません。
      様々な思いが心をよぎります。

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