2020-04

古典

肉食鳥のような

すると、老婆は、見開いていた眼を、一層大きくして、じっとその下人の顔を見守った。瞼の赤くなった、肉食鳥のような、鋭い眼で見たのである。それから、皺で、ほとんど、鼻と一つになった唇を、何か物でも噛んでいるように動かした。細い喉で、尖った喉仏の...
古典

安らかな得意と満足

「何をしていた。云え。云わぬと、これだぞよ。」 下人は、老婆をつき放すと、いきなり、太刀の鞘を払って、白い鋼の色をその眼の前へつきつけた。けれども、老婆は黙っている。両手をわなわなふるわせて、肩で息を切りながら、眼を、眼球が瞼の外へ出そうに...
古典

鶏の脚のような

老婆は、一目下人を見ると、まるで弩(いしゆみ)にでも弾かれたように、飛び上った。「おのれ、どこへ行く。」 下人は、老婆が死骸につまずきながら、慌てふためいて逃げようとする行手を塞いで、こう罵った。老婆は、それでも下人をつきのけて行こうとする...