2020-03

古典

えびフライと雑魚

普段、おかずの支度はすべて姉がしているが、今夜はキャベツを細く刻むだけにして、フライは父親が自分で揚げた。煮えた油の中でパン粉の焦げるいいにおいが、家の中にこもった。四人家族に六尾では、配分がむつかしそうに思われたが、父親は明快に、「お前と...
古典

対抗心

午後遅く、裏の谷川のよどみに漬けておいたビールを引き揚げて戻ってくると、隣の喜作が独りで畦道をふらついていた。隣でも父親が帰ったとみえて、真新しい、派手な色の横縞のTシャツをぎごちなく着て、腰には何連発かの細長い花火の筒を二本、刀のように差...
古典

冷凍食品のえびフライ

そんなにまでして紙袋の中を冷やし続けなければならなかったわけは、袋の底から平べったい箱を取り出してみて、初めてわかった。その箱のふたには、『冷凍食品 えびフライ』とあり、中にパン粉をつけて油で揚げるばかりにした大きなえびが、六尾並んでいるの...