2020-02

古典

一人一人の人間がいる

「日本人は先生に対して、ずいぶんひどいことをしましたね。交換船の中止にしても国際法無視ですし、木づちで指をたたき潰すに至っては、もうなんて言っていいか。申し訳ありません。」 ルロイ修道士はナイフを皿の上に置いてから、右の人さし指をぴんと立て...
古典

いい人

だから気をつけろ。ルロイ先生はいい人にはちがいないが、心の底では日本人を憎んでいる。いつかは爆発するぞ。・・・・・・しかし、ルロイ先生はいつまでたっても優しかった。そればかりかルロイ先生は、戦勝国の白人であるにもかかわらず敗戦国の子供のため...
古典

ルロイ修道士の左の人さし指

「先生の左の人さし指は、相変わらず不思議なかっこうをしていますね。」 フォークを持つ手の人さし指がぴんと伸びている。指の先の爪はつぶれており、鼻くそを丸めたようなものがこびり付いている。正常な爪はもう生えてこないのである。あのころ、ルロイ修...