2019-10

古典

第百二十五段 ~男の死~

昔、男、わづらひて、心地死ぬべくおぼえければ、 つひにゆく道とはかねて聞きしかどきのふけふとは思はざりしを 昔、男が病気になって、心持ちが悪く死ぬに違いないと思われたので、〈死が最後に行く道であるとはかねてから聞いていたけれど、その道を自分...
古典

第百二十四段 ~ぼやき~

昔、男、いかなりけることを思ひけるをりにかよめる、 思ふこといはでぞただにやみぬべきわれとひとしき人しなければ 昔、男がどのようなことを思った折であろうか、こう詠んだ、〈思うことは言わないでそのままやめてしまう方がいい。(言ったところで、わ...
古典

第百二十三段 ~歌の力~

昔、男ありけり。深草にすみける女をやうやう飽きがたや思ひけむ、かかる歌をよみけり。 年を経てすみこし里をいでていなばいとど深草野とやなりなむ女、返し、 野とならばうづらとなりて鳴きをらむかりにだにやは君は来ざらむとよめりけるにめでて、ゆかむ...