2019-07

古典

第六十九段 ~その一 伊勢の斎宮~

昔、男ありけり。その男、伊勢の国に狩の使ひにいきけるに、かの伊勢の斎宮(いつきのみや)なりける人の親、「つねの使よりは、この人よくいたはれ」といひやれりければ、親の言なりければ、いとねむごろにいたはりけり。あしたには狩にいだしたててやり、ゆ...
古典

第六十八段 ~充電完了~

昔、男、和泉の国へいきけり。住吉の郡、住吉の里、住吉の浜をゆくに、いとおもしろければ、おりゐつつゆく。ある人、「住吉の浜とよめ」といふ。 雁鳴きて菊の花さく秋はあれど春のうみべにすみよしのはまとよめりければ、みな人々よまずなりにけり。  昔...
古典

第六十七段 ~旅は続く~

昔、男、逍遥せしに、思ふどちかいつらねて、和泉の国に二月(きさらぎ)ばかりにいきけり。河内の国、生駒の山を見れば、曇りみ晴れみ、立ちゐる雲やまず。朝より曇りて、昼晴れたり。雪いと白う木の末にふりたり。それを見て、かのゆく人のなかに、ただひと...