2019-05

古典

第二十一段 ~その二 寄りは戻らず~

この女、いと久しくありて、念じわびてにやありけむ、いひおこせたる。 いまはとて忘るる草のたねをだに人の心にまかせずもがな 返し、  忘れ草植うとだに聞くものならば思ひけりとはしりもしなまし またまた、ありしよりけにいひかはして、男、  忘る...
古典

第二十一段 ~その一 不可解な別れ~

昔、男女、いとかしこく思ひかはして、こと心なかりけり。さるを、いかなることかありけむ、いささかなることにつけて、世の中を憂しと思ひて、いてでいなむと思ひて、かかる歌をなむよみて、物に書きつけける。 いでていなば心かるしといひやせむ世のありさ...
古典

第二十段 ~心変わり~

昔、男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。さてほどへて、宮仕へする人なりければ、かへり来る道に、三月ばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて、女のもとに、道よりいひやる。 君がため手折れる枝は春ながらかくこそ秋のもみぢしにけれ...